この記事は、A.C. Grayling『The History of Philosophy』「パート1. 古代哲学: タレス」の読書ノートです。
概要
- タレスは古代ギリシャの哲学者であり、前ソクラテス哲学者の一人。
- 「哲学の父」と称されることも多いが、厳密にはそれ以前にも哲学的な思索は存在した。
生涯
- 生年月日:不明
- 活動時期:紀元前585年の日食を予測したことで知られる。この年が彼の活動の頂点(フロリウィット)とされる。
- 出身地:イオニアのミレトス
主要な業績と思想
- 万物の根源(アルケー)としての水
- タレスは、水が万物の根源であると考えました。
- 理由:
- 水は液体、固体、気体の三態を持ち、あらゆる形に変化する。
- 水は生命に不可欠であり、動植物の中にも存在。
- ナイル川の氾濫が土壌を形成する現象などから、地球の生成に水が関与していると考えた。
- 合理的探求
- タレスは伝統的な神話的説明を拒否し、観察と理性に基づいて自然の現象を説明しようとした。
- 重要性:これは、科学的思考の始まりを示すものであり、彼が最初の哲学者と呼ばれる理由。
- 実践的業績
- 日食の予測:紀元前585年の日食を予測し、天文学の知識を証明。
- オリーブ圧搾機の逸話:
- タレスはある年のオリーブの豊作を予測し、全てのオリーブ圧搾機を借り上げ、その後、プレミアム価格で貸し出して利益を得た。
- 川の渡し方の工夫:
- リディアの王クロイソスの軍隊が川を渡る方法として、川の流れを分岐させて渡る案を提供した。
哲学的意義
- 科学と哲学の発展:
- タレスの合理的探求は、科学と哲学の発展において重要な役割を果たしました。
- 観察と理性の重視:
- タレスは、自然の現象を観察し、それを基に理性的な説明を提供する方法を確立。
- 対比:ヘシオドスの神話的説明とは対照的であり、観察と理性による説明の重要性を強調。
- 魂の概念:
- タレスは、磁石が鉄を引き寄せる現象を「魂」の存在によるものと解釈。
- アリストテレスの解釈:魂は運動を引き起こすものであり、タレスは「すべてのものは神々で満ちている」と考えた。
最期と遺産
- 最期:
- タレスは、高齢で脱水症状により亡くなったと言われる。
- もう一つの伝説では、星を観察している最中に井戸に落ちて亡くなったとされる。
- 遺産:
- 彼の思想と方法論は、後の哲学者や科学者に大きな影響を与えた。
- タレスの探求は、神話的な説明から科学的・合理的な説明への転換点を示している。
名言
- 「汝自身を知れ」:タレスに帰される格言で、自らの無知を自覚することの重要性を説いている。
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