経営戦略の展開

企業経営理論

1. 経営戦略の展開方式

経営戦略をどのような手段ないし展開方式で実行していくかについては、内部成長方式と外部成長方式とがあります。

(1) 内部成長方式

内部成長方式は、企業内部の経営資源を活用して発展していく手法です。その中でもR&D(研究開発)は、自社内で時間をかけて開発した成果を中心に展開する方法です。

(2) 外部成長方式

外部成長方式は、企業外部の経営資源を活用して発展していく手法です。具体的な方法としては、合弁・提携、合併・買収(M&A)、系列化・集団化などがあります。

合弁・提携

合弁は複数の企業が共同で事業経営に参画する合弁会社を設立する方法です。

提携は、資本提携や人事提携、販売提携などを通じて、自社の資本やノウハウに加えて他社の技術やノウハウ、あるいは資本などを活用する方法です。

企業は競争優位を確保するために、競合他社であっても技術開発や調達、生産、販売などの分野で相互補完的な協力関係を築きます。クロス・ライセンス、共同技術開発、生産委託(OEMを含む)、部品調達、共同生産、生産受託、販売提携などの形態を通じて自社活動を実行します。戦略的提携とは、どの企業とどのような方法で提携するかを選択することであり、新製品開発や新市場参入において他の企業の支援が必要不可欠であり、競争戦略上重要な要素となっています。

合併・買収 (M & A)

(省略)

系列化・集団化

系列化とは、大企業が中小企業や関連会社を自身の下請け工場または販売協力企業として統合し、生産工程の合理化や販売市場の確保を図ることであり、支配関係に基づく結びつきです。

一方、集団化は、歴史的に深いつながりを持つ複数の企業が金融機関を中心に株式の持ち合いや系列融資、役員の派遣、集団内取引、新会社の設立などを通じて密接な関係を築き、社長会などによる統合管理を行いますが、各会社間には支配関係を設定せず、協調関係を重視した結びつきとなります。

2. 戦略展開方式としてのM&A

(1) M&Aの意義

M&A(吸収合併)は、吸収合併(Merger)と買収(Acquisition)の略語です。合併は、2つ以上の企業が合併契約に基づいて1つの企業に統合することを指し、買収は買い手である企業や個人が、売り手の企業から資産、営業部門、株式などを購入し、経営権や支配権を獲得することを目的とします。

(2) M&Aの長所と短所

長所

・時間の節約
・失敗のリスクが少ない
・経営資源能力の補完・補充
・規模の経済の追求・実現

短所

・短時間の意思決定に伴う弊害
・統合後の組織的一体性の確保が困難

(3) M&Aの分類

買収分野を基準とした分類 (形態別分類)

・水平型M&A
・垂直型M&A
・多角化型M&A

相手方の合意の有無による分類

・友好的M&A (非敵対的M&A)
・敵対的M&A

「敵対的」か「非敵対的」かという従来の区分は、現在の経営者にとって(M&Aを仕掛けようとしている相手が)「敵対的」か「非敵対的」かという区分に過ぎません。また、最近では、中小企業の事業承継手段の一つとして、友好的なM&Aに注目が集まっています。

(4) 株式公開買付 (TOB)

株式公開買付(TOB: Take Over Bid)は、ある企業がターゲット企業の支配権を取得または強化するために行われる手法です。この方法では、株式市場の外でターゲット企業の不特定多数の株主に対して、一定期間内に一定数量以上の株式を一定価格(通常は時価を上回る価格)で買い付けることが新聞などで公表されます。これにより、大量の株式を取得することを目指します。イギリスではTOBと呼ばれ、アメリカではテンダー・オファーとして知られています。日本では株式公開買付という用語が使用されています。

(5) リストラクチャリング

一般的に、リストラクチャリングは主に合理化や人員削減策として実施されることが多いですが、本来の意味では事業の構造を基本的に再構築し、経営革新を図る手法を指しています。

3. 先発の優位性と後発の優位性

(1) 先発の優位性

先発の優位性は、他社に先行して特定の製品の生産や販売を手掛けた企業が、他社に比べて利益と市場シェアの両面で有利な位置に立つ傾向を指します。先発者が優位になる理由は以下の通りです。

a. 早期に経験曲線効果を獲得できる
b. うま味のある市場を獲得できる
c. スイッチングコストによる参入障壁を形成することができる
d. (製品の性格によっては) ネットワーク外部性という効果を利用できる

(※) ネットワーク外部性

IT 機器関連での規格競争に見られるように、ネットワークに参加するメンバーが多くなるほど、参加メンバーの効用が増加することを指します。

(2) 後発の優位性

先発の優位性が成立する一般的なケースもありますが、後発企業にも優位性が生じる場合があります。特に、以下のようなケースでは後発の優位性が働くことがあります。

a. 先発企業が研究開発や顧客教育、インフラストラクチャーの開発など、多岐にわたる投資を行っている場合、後発企業はその成果を利用することができる可能性があります。これにより、後発企業は費用や時間を節約し、先発企業に追いついたり、それ以上の成果を上げることができる場合があります。

b. 技術や顧客ニーズが変化した場合、後発企業が柔軟に変化に対応できる可能性があります。一方、先発企業は既存の仕組みや惰性に固執している場合、変化に対応することが難しくなることがあります。このような場合、後発企業が先発企業を追い越すことがあります。

c. 小規模な新規企業が低価格で市場に参入する場合、既存企業は価格競争に参加するか、ある程度のシェアを譲るかの選択を迫られます。このとき、既存企業は利益率を下げるよりも、新規企業との価格競争を避けるために一部のシェアをあきらめることを選択する場合があります。

後発の優位性は、先発の優位性に比べて一般的には議論されることは少ないですが、特に中小企業には適合する側面もあります。したがって、先発の優位性と対比して後発の優位性も確認しておくことは重要です。企業が自身の競争戦略を構築する際には、先発と後発の両方の側面を考慮し、市場環境や企業の特性に合わせた戦略を選択することが求められます。

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