経営戦略論の概要

企業経営理論

経営戦略とは、企業と環境の関わり方に関するものです。もう少し詳しく言うと、企業が、変化する環境にいかに対応し、どのように働きかけていくかを決定することです。

階層別戦略

経営戦略は、一般に組織の階層ごとに策定されます。

  1. 企業戦略 (全社戦略) ・・・企業全体の将来のあり方に関わる戦略
  2. 競争戦略 (事業戦略)・・・企業の事業分野ごとの競争力を高めるための戦略
  3. 職能別戦略 (機能別戦略)・・・企業の機能ごとに持たれる戦略

戦略の策定は、(1) まず将来に向けての大きな流れとしての企業戦路を考え、(2) 次に競合他社に勝つための競争戦勝を考えます。そして (3) 最後に、これらの戦略を実行するための現場づくりのための職能別戦略を考えていくことになります。

経営戦路立案プロセス

つづいて経営戦略の立案について、そのプロセスを追いながらみていきましょう。

経営理念

経営戦略立案の最初のプロセスは、経営理念の策定です。

企業の経営活動をすすめるにあたって、経営者によって一般的に表された基本的な考え方を示すものが経営理念です。

企業は何のために存在するのか、企業がどのように行動すればよいのかを示す、あるいは方向づけを与える考え方のことですね。

経営目標の設定

経営理念を策定したら、つづいて経営目標を設定します。経営目標は、経営理念を具体的に形に表したもの。組織構成員の活動の範囲や方向、経営活動によって到達したい地点、もしくは成果を示します。

環境分析

SWOT分析

企業にとっての環境は、大きく外部環境と内部環境に分けられます。外部環境は、企業を取り巻く環境であり、マクロ環境(人口統計、経済動向、政治経済、技術、環境など)とミクロ環境(市場、競争業者、供給業者、中間業者など)に分けられます。

内部環境とは、企業の内部、すなわち企業の保有する経営資源(人、物、金、情報など)の状況です。

外部環境や内部環境の分析を行う手段にSWOT分析があります。

SWOT とは、

  • Strengths (強み)
  • Weaknesses (弱み)
  • Opportunities (機会)
  • Threats(脅威)

の頭文字をとったものです。

機会 (O) と脅威 ( T ) は外部環境分析に関連しています。

機会(O)とは、経営戦略上、企業にとって競争優位に立てる魅力のことです。

「脅威 (T)」とは、自社の競争優位を喪失させるような要因です。

自社の強み(S)と弱み(W)は、内部環境分析に関連しています。

前述の経営資源(人、物、金、情報など)ごとに、強みと弱みを分析する必要があります。

3C 分析

3C とは、

  • Company (自社)、
  • Customer (顧客)、
  • Competitor (他社)の

頭文字をとったものです。

これら 3 つの視点から市場の現状を分析することを 3C 分析といいます。

顧客の立場では、市場の概要やトレンド、流通に加えて、自社の商品やサービスに対する購買行動やニーズの動向を把握し、主要な購買要因を明確にすることが大切です。一方、他社の立場では、市場シェアやコスト構造などの概要を把握して、自社にとっての競合を特定し、強みと弱みを分析します。そして、成功している企業を探し、その成功の理由を把握することが必要です。また、自社の視点では、自社の強みや弱みを分析し、他社の成功要因と自社の強みの整合性や差異を把握することも重要です。

ドメインの決定

「ドメイン」とは、企業が生産・販売している商品やサービスの分野のことで、企業が長期的に存続するために必要な市場内での生存領域です。企業は自社の経営資源や競争地位に応じて、目標とする競争市場を限定していくことが重要です。

ドメインは一般に次の3 つの規定に よって決められている。

  1. 顧客機能ないしニーズ (What: 何を)
  2. 対象市場 (Who: 誰に)
  3. 独自能力 (How: どのように)

ドメインを設定する際には、コア・コンピタンスを考慮することが重要です。コア・コンピタンスとは、「他社に真似できない企業独自の価値を提供する中核的な能力」を指します。これは、企業が蓄積してきた固有技術やノウハウ、技能などを指し、ケイパビリティやコア・スキルとも呼ばれます。コア・コンピタンスがある場合、これを中心に事業展開をすることができるため、ドメインの設定において非常に重要です。

企業ドメインと事業ドメイン

大企業では、一つの企業ドメインに複数の事業が含まれることが多いため、より具体的なドメインの定義が必要となります。なぜならば、企業ドメインだけでは、個々の事業展開に必要な具体性を持っていないため、事業レベルでドメインを設定し、個々の事業に即した形で内容をより具体的に規定する必要性があるからです。このような個別事業に関するドメインは、「事業ドメイン」と呼ばれます。

ただし、事業ドメインの単なる集合が企業ドメインとなるわけではありません。企業ドメインは、時間的・空間的に発展可能性のある、現在の事業に関するドメイン創造を促進するものである必要があります。つまり、企業ドメインは、将来にわたって事業展開を拡大していくための指針として機能する必要があるのです。

戦略代替案の策定

目標を達成するための戦略案をいくつか策定します。戦略代替案の基本パターンは、SWOT 分析から導出されます。(クロス SWOT 分析)

  1. 強み × 機会: 強みを活かして機会をつかむための方策は?
  2. 強み × 脅威: 強みを活かして香威を回避するための方策は?
  3. 弱み × 機会: 弱みを克服して機会を活かすための施策とは?
  4. 弱み × 脅威: 弱みから最悪のケースを回避するためには?

戦略の決定

戦略代替案の中から、目標を達成するために最適な戦略案を選択します。

経営管理

マネジメントの重要性

人間が個人の力だけでは達成できない目標を達成するためには、複数の人が力を合わせて協力する必要があります。このとき、組織が必要となります。マネジメントとは、目標を達成するために協力する人々の力を結集し、目標達成に導くことを指します。この機能は、企業だけでなく、あらゆる組織にとって重要です。

マネジメント・サイクル

マネジメントは、(1) 計画を立て(Plan)、(2) それに基づいて実施し (Do)、(3) 実施した結果を計画に照らしてチェックし (Check)、(4) チェックした結果を次の計画に反映させて、より円滑に管理のサイクルが回るような対策・処置をとる (Action / Act) というサイクルをとります。これを PDCA サイクルと言います。

経営計画

経営計画の必要性

なぜ企業には経営計画が必要なのでしょうか。

1 つ目の理由は、企業が取り巻く環境が常に変化しているため、環境変化を完全に予測することができないからです。組織全体で環境変化を認識し、整理・統一して把握した上で、各部門の行動を決定するために、経営計画が必要になります。

2 つ目の理由は、計画した行動と実際の行動結果とを比較し、差異があれば適切な修正を行う必要があるためです。

不測事象対応計画・BCP

不測事象対応計画(コンティンジェンシー・プラン)

漠然としているものの起こる可能性のある問題(不測事象)ごとに、複数の計画をあらかじめ立てておき、それが生起した際に、それに対応した予備の計画に切り替えることにより、迅速な対応を果たし企業の損害の最小化を図ることが可能になります。

BCP (Business Continuity Plan,事業継続計画)

不測事象対応計画 (コンティンジェンシー・プラン) の一種。

BCP においては、当該企業の「存続に関わる最も重要性・緊急性の高い事業」である「中核事業」を絞り込むと同時に、緊急時においてそれをどの程度復旧させることが可能なのか、また目標復旧時間をどのように設定することが可能なのか、あるいはそれを実現するために必要となるバッアップ措置は何かなどを事前に確認しておくことが重要です。

ローリング・プラン

長期的な経営計画を立てた後も、常に注意を払い、環境の変化に合わせて計画を見直す必要があります。

ローリング・プランとは、長期的な計画に環境の変化によってズレが生じた場合、計画を修正して原計画を補修・改良することです。一方、不測の事態が発生した場合に備えて用意されるのが、不測事象対応計画(コンティンジェンシー・プラン)です。この計画では、予期せぬ事態が発生した場合には、新たな対応策を素早く立案し、実行することが必要です。

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