エフェクチュエーションとは、サラス・サラスバシー (『エフェクチュエーション: 市場創造の実効理論』)によって提唱された理論で、優れた起業家が共通して持つ意思決定プロセスや思考、考え方を発見し、体系化した市場創造の実行理論です。
コーゼーション
ある程度将来を予測できる状況では、最初に目標を設定し、その実現のために最適な手段を検討する手法が採られてきました。このような目標設定型の逆算的アプローチを「コーゼーション (Causation)」と呼びます。ただし、コーゼーションは、ある程度将来が予測できる場合には有効ですが、不確実で将来が予測できない VUCA 時代では通用しないと言われています。
VUCA 時代とエフェクチュエーション
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の略で、社会やビジネスにとって未来の予測が難しくなる状況を意味します。
そうした中で、不確実な状況下でも新たなビジネスを創造する起業家の共通の思考が注目され、コーゼーションとは異なるアプローチとして、手持ちの手段から新しいゴールを発見していく問題解決型のアプローチであるエフェクチュエーションが注目されるようになりました。
エフェクチュエーション 5 つの原則
また、エフェクチュエーションでは、「許容可能な損失の原則(Affordable Loss)」、「クレイジーキルトの原則(Crazy-Quilt)」、「手中の鳥の原則(Bird in Hand)」、「飛行機の中のパイロットの原則(Pilot-in-the-Plane)」、「レモネードの原則(Lemonade)」といった行動原則が挙げられています。
許容可能な損失の原則
許容可能な損失の原則では、もし損失が生じても致命的にならないコストを予め設定し、将来期待される利益をベースに戦略を練るのではなく、どこまでの損失なら許容できるかを決め、それを超えないように行動することを意味します。
クレイジーキルトの原則
クレイジーキルトの原則は、形や柄の異なる布を縫い合わせて一枚の布を作るクレイジーキルトのように、顧客や競合他社、協力会社、従業員など様々な関係者をパートナーと捉え、共にゴールを目指すことが求められます。
手中の鳥の原則
手中の鳥の原則は、新しい方法ではなく既存の手段を用いて、新しい何かを生み出すことです。目標やプランによって手段を選択するのではなく、企業や組織が既に持っている人材のスキルや技術力、ノウハウ、人脈などを活用する問題解決型のアプローチです。
飛行機の中のパイロットの原則
飛行機の中のパイロットの原則は、他の4つの原則を網羅した原則であり、状況に応じて臨機応変に行動することを意味します。常に数値を確認し、不測の事態に備え、外部環境の変化に対応することが重要です。
レモネードの原則
レモネードの原則は、アメリカのことわざ「When life gives you lemons, make lemonade.」に基づき、使い物にならない欠陥品でも工夫を凝らして新たな価値を持つ製品へと生まれ変わらせる考え方です。
参考文献
- 過去問完全マスター製作委員会『2023 年度版 中小企業診断士試験 論点別・重要度順 過去問完全マスター 3 企業経営理論』
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